第4回国連環境総会(UNEA4)での アミーナ・J・モハメッド副事務総長挨拶 (ナイロビ、2019年3月14日)
プレスリリース 19-014-J 2019年04月01日

各国首脳の方々、
各国代表の方々、
同僚の方々、
皆様、

まず、エチオピア政府と、先週の悲劇的な航空機墜落事故でお亡くなりになった多くの国に住む犠牲者の遺族の方々に、深い哀悼の意を表したいと思います。

ご存じのとおり、乗客には国連ファミリーの同僚たちも多く含まれていました。

中には、この総会に出席を予定していた職員もいました。私たちが安全で持続可能な地球に暮らせるようにすることを、その一生の仕事としていた人々です。

私は皆様全員と悲しみを共にしています。

そして私は、皆様と連帯し、強い経済を可能にし、私たちの健康と地球を守る野心的な政策に向けてついに舵を切ることを決意しています。

今年で4年目を迎える環境総会は、現代で最も重要な環境課題のいくつかを明らかにし、その解決策を提案するという点で、ますます力をつけています。

私たちは引き続き、この総会の英知に期待しています。なぜなら、私たちの環境は全世界で、極度の圧力にさらされているからです。

地球はこれまでにない転機を迎えています。この国連環境総会は、悪影響と損失から、解決策や行動へと軌道を修正するための機会です。

今年の国連環境総会は、環境課題の革新的な解決策や、持続可能な消費と生産を中心的な議題としています。

私はきょう、3つの重要なテーマに沿って、こうした解決策とイノベーションを取り上げたいと思います。

1. 持続可能な消費、生産とサプライチェーン
2. 生物多様性の損失と保全
3. 気候変動

まず、私たちの消費と生産のパターンを見てみましょう。この総会でも焦点となる議題です。

2017年、地球から採取される資源の量は、900億メートルトンに達しました。

そのうち、リサイクルによって経済へ還流する資源は10%未満です。

数百万トンのプラスチックが海に流入し、海洋生物には壊滅的な影響が及んでいます。

私たちは毎日、「(資源の)投入、生産、廃棄」に基づく線形経済モデルの欠陥を甘受しているのです。

こうした欠陥は、私たちが携帯電話を生産、使用、廃棄するやり方に端的に表れています。

ここにいる皆様はすべて、携帯電話をお持ちのことでしょう。私たちが誰でも使っているこの電話は通常、黒鉛からシリコンに至るまで、60種類以上の金属で作られています。

その中には、採取地の環境や人々、コミュニティーにとって極めて有害な金属が多くあります。

一方、その生産・消費連鎖の反対側では毎年、およそ550億ドルに相当する約4,500万トンの電子廃棄物が発生しています。しかも、その量は増大の一途をたどっています。現時点でリサイクルや再利用の比率は20%にも達していないからです。

電機電子機器廃棄物は、有毒物質を土壌や地下水面にしみ込ませ、飲料水の水質に影響を与え、温室効果ガス排出量の増加を助長するメタンを発生させるため、その廃棄量の増大は、健康と気候変動に対するリスクとなります。

こうした持続不可能な消費と生産の循環を断ち切るための解決策は、はっきりしています。私たちは、経済発展のために天然資源の枯渇もやむを得ないという考え方を変えねばなりません。

市民社会、政府と地方自治体、企業による果敢な取り組みは、私たちが食べ方や買い方、移動の方法、ごみの捨て方を革新的に変えれば、より大きな経済的利益を実現できることを示しています。

例えば、キリバスの「テ・マエウ(Te Maeu)」プロジェクトでは、土がなくても食料を作れる独自の水耕システムを家庭に提供しています。

ヒルトンをはじめとする大型ホテル・チェーンは最近、水の消費と廃棄物の量を50%減らすことを約束しました。

また、使い捨てプラスチックの全廃に向けた取り組みを始めた国もあります。コスタリカは2021年、インドは2022年までに、これを段階的に禁止する予定です。

こうした取り組みは、消費と生産の習慣を持続可能なものに変えるために必要な措置のごく一部にすぎません。

私たちは、一度使った製品をすぐに捨てるのではなく、わずかな部品で作れる製品や、長持ちする製品の創作に力を入れなければなりません。

私たちは、壊れたり、捨てられたり、使われて空になったりした製品をいずれもリサイクルまたは再利用することで、これらが埋立地や路側に廃棄されないようにせねばなりません。

そして、すべての再生可能な資源の再生を支援することで、将来の世代がこれを使えるようにしなければなりません。

つまり、私たちは循環経済を作り出さねばならないのです。

第2に、私は生物多様性の損失に触れたいと思います。この問題もまた、私たちの持続不可能な消費と生産の習慣に関連しているからです。

私たちが土地や資源を利用して経済を活発化させれば、非常に重要な生態系や生息地が破壊されてしまいます。

事実、今週初めにここで発表された報告書は、資源の採取と加工が、全世界の生物多様性損失と水ストレス全体の90%の原因となっているという、驚くべき調査結果を明らかにしました。

1970年以来、ヨーロッパと中央アジアの湿地面積は50%縮小しています。

また、西アジアの40%を占める土地が、砂漠化の危機に瀕しています。

生物多様性損失の継続は健康や経済、社会に甚大な影響を及ぼしかねません。例えば、米州の自然の経済的価値は、毎年24.3兆ドル程度に上るものと見られています。

地球の生態系と生物多様性を守るための解決策はあります。

私たちに必要なのは、保護区を管理するための革新的な解決策と、地上・水産資源のさらに持続可能な使用や管理の推進です。

例えば南アフリカでは、所有地を保護区に指定する地主に対する減税措置が、試験的に導入されています。

インドでは、女性の農民グループが種子バンクや従来型の営農法を用いて、伝統作物の保全に取り組んでいます。

また、生物多様性事業基金の数は増大を続け、保全に優先的に取り組む中小企業や協同組合への投資を行っています。

皆様、

本日の第3点目に移ります。私たちの活動全体に暗い影を落としている気候変動は、私たちの自然生態系や農業、経済、健康、そして安全を脅かしています。

気候変動は、私たちの持続不可能な消費・生産習慣とも関係しています。私たちは今週、温室効果ガス排出量の53%が資源の採取と加工から生じていることを知りました。

昨年は気候変動に関する政府間パネルが、進路を変えるための時間は12年しか残されていないことを明らかにしました。

そうしなければ、取り返しのつかない影響が及ぶことになります。

今こそ、大きく野心的な一歩を踏み出す時です。

各国はポーランドのカトヴィツェで開催されたCOP24で、気候変動に取り組み、より大きな野心に向けて突き進むための取り組みの指針となるルールブックを採択しました。

私たちには、パリ協定の履行に向けた包括的な法的枠組みもあります。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)加盟国により採択されたこの枠組みは、地方自治体や民間セクターも歓迎しています。

そして、今年の9月23日には、事務総長がニューヨークで気候行動サミットを招集し、野心を追求する呼びかけをさらに強めるとともに、私たちに気候変動対策の加速を強く訴えることになっています。

私たちには野心とともに、スピードも必要だからです。

事務総長は世界のリーダーに対し、スピーチではなく、計画を持ってサミットに臨むよう呼びかけています。

それは、今後10年間で排出量を45%削減し、2050年までに正味ゼロ・エミッションの目標を達成するための計画です。

それはまた、電力から炭素を取り除き、最終的にはさらに持続可能なインフラと都市を整備するための計画であり、単なる環境に優しい「グリーン・ジョブ」ではなく、働きがいのある人間らしいグリーン・ジョブを創出するための計画でもあります。

それはさらに、街頭でデモを繰り広げている人々すべてに対し、その声が真摯に受け止められていることを確信させるほど野心的で、信頼できる計画でなければなりません。

全世界ですでに、多くの革新的な解決策が生み出されているところです。

ナイジェリアでは、5州で新たにミニグリッドが試験的に運用され、村々が信頼性の高いゼロ・カーボンの電力を利用できるようになりました。

米国では、ソリディア・テクノロジーズ(Solidia Technologies)という企業が、コンクリートの製法を少し変えるだけで、排出量を70%削減しようとしています。

シンガポールでは、政府が広範な緑化への取り組みによってエネルギー需要削減を促進することで、空調の必要性が低下しました。

気候サミットでは、このような解決策の拡大と普及を推進する予定です。そして、エネルギー、産業、金融とカーボン・プライシング、自然に基礎を置く解決策、レジリエンスと適応、インフラ、都市とローカルな行動といった分野全体で、野心を高め、行動を活発化してゆきます。

また、サミットでは世論を動員し、野心的気候変動対策を阻む政治的・社会的課題の解決策も提案します。

気候サミットは、世界的な野心と包摂的な多国間主義の場となることでしょう。

そこでは、解決策が存在し、政府とすべての担い手に、これを大規模に展開する用意があることが実証されるでしょう。

政府、非政府のステークホルダーには、世界に持続可能で公平な道を歩ませるための計画があることも明らかになるでしょう。

皆様、(行動の呼びかけ)

ここナイロビに参集した私たちは今、かつてない緊急事態と行動の必要性に直面しています。

私たちが今週、ここで行う作業は、だれも予測できなかったほどの重要性を帯びています。

この緊急性と重大性は、優秀な環境リーダーの命が多く失われたことで、さらに高まっています。

命を失ったのはまさに、各国の政府に指名され、環境保護と海洋保全を訴えかけるためにナイロビに向かっていた若き先駆者たちでした。

そこには、熱意のあるジェンダー平等の擁護者で、持続可能な開発目標(SDGs)とその環境との関連づけを熱心に訴えていた国連環境計画(UNEP)の職員がいました。

そして、ストーリーテリングから写真に至るまで、あらゆる手段を駆使して人々をつなげ、気候変動の解決を図ることを一生の仕事としていた世界銀行の職員もいました。

こうした、環境と気候の問題に配慮する人間社会の担い手たちは、時間の関係から個別に名前を挙げることはできないものの、その他多くの犠牲者とともに、目的を持ってナイロビにやってきたのです。

今の喪失感を表現できる言葉はありませんが、私たちの活動によって、こうしたリーダーに敬意を表することはできます。また、そうしなければなりません。

私たちはこうした人々の活動をさらに一歩進め、表面化させねばなりません。

世界で最も急を要する環境・気候課題の解決策を真剣に模索すれば、私たち一人ひとりが影響力を及ぼすことになります。それを忘れてはなりません。

新たなキャンペーンが始まったり、私たちの消費パターンが新たに変化したりすれば、私たちは大きな一歩を踏み出すことになるのです。

私は皆様に対し、責任を内面化し、自らの関心を行動に移すようお願いします。

私はきょう、ここに集まったすべての人々に対し、若者を活動の中心に据えるよう要請します。若者に対しては、反抗心を持ちながら、企業の生産のあり方、私たちの世界における生物多様性の喪失、そして気候変動に対する各国政府の対応に関する解決策を模索するよう求めてください。

私はこの2日間、#SolveDifferentキャンペーンに対する支援で目にした大胆なパートナーシップやアイディア、イノベーションに感銘を受けてきました。

最後の点として、私たちの取り組みを強化、拡大する際のパートナーシップの重要性を取り上げたいと思います。

各国政府は、気候変動と環境に関するこの行動を明確化し、拡大するための空間を提供しなければなりません。

皆様の政策決定に都市のリーダーを関与させるようにしてください。都市は人々に最も近い政府のレベルであり、国が解決策を探る際のイノベーション・ラボの役割を果たすことができるからです。

そして、民間セクターのリーダーたちは、生物多様性専門のプライベート・エクイティ・ファンドから、100%の再生エネルギー化を遂げたサプライチェーンに至るまで、環境保護と気候変動対策に関し、最も野心的な行動のいくつかを考案しています。

持続可能な未来が可能であるだけでなく、すでに実現しはじめていることを世界各地の人々が把握できるよう、こうしたアイディアを取り上げ、広げていこうではありませんか。

私たちのグローバル経済を、慎重な管理に報い、浪費と汚染を罰するものへと作り変えていくことは必要なだけでなく、明らかに可能であるということを、私たちは世界に示さなければなりません。

2019年を転換へとつながる解決策の年にしようではありませんか。

ありがとうございました。



トップニュース→プレスメッセージ/演説→第4回国連環境総会(UNEA4)での アミーナ・J・モハメッド副事務総長挨拶 (ナイロビ、2019年3月14日) より

https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/32601/